第1回さっぽろ腎臓病市民講座 講演内容

2024年1月13日(土) 東区区民センター 視聴覚室

【ご挨拶】

本日は雪が降り足元が悪い中、このようにたくさんの市民の皆さんにお集まりいただきありがとうございます。
本日は、さっぽろ腎臓病市民講座の第一回の講演会です。

まず初めに、私からこの団体についてご紹介させていただきます。

  

私は、さっぽろ腎臓病市民講座の会員代表で、医療法人ネフロハスの理事長をしております。

 

【さっぽろ腎臓病市民講座を設立した背景】

 

腎臓はさまざまな役割を果たしていますが、最も重要な働きは血液中から不要な物質を取り除くことです。これを可能にするために、腎臓ではたくさんの細い動脈が複雑な構造を形成しています。このため、加齢、高血圧、脂質異常、高尿酸血症、糖尿病、喫煙などで細動脈が障害を受けると腎臓の働きは徐々に低下してゆきます。これらの病気や生活習慣を適切に管理した場合としなかった場合では、しなかった場合の方が腎機能の低下は速くなります。

一方、原発性糸球体疾患、間質性腎疾患、リウマチ/膠原病、血管炎などの疾患が加わると、

腎機能は急速に低下することがあります。

血尿が出たり発熱したり急に尿量が減るとすぐに異常に気付きますが、そうではない場合は気が付かないうちに腎臓の機能が低下してしまうことがあります。
いったん低下した機能が回復する腎臓の病気はごく限られていますので、早期に発見して適切な治療を継続することが大切です。

健診で尿所見や腎機能の異常を指摘されても「具合が悪くないから」と放置していた、受診して詳しい検査を勧められたが断った、あるいは、必要な検査を受けて治療もしたが楽になったので通院をやめた、このような方が数年後に体調不良で受診すると、すぐに透析をしなければならない状態なっていた、ということがあります。

透析療法は新しいアイディアの導入、機器や薬剤の進歩によって以前よりも治療成績は向上していますが、血液透析であれば必ず週に2,3回は通院し1回に36時間の透析が必要です。無尿であれば、薬の内服以外にはほとんど飲水できないような水分制限、食塩・カリウム・リンの制限が必須です。腎移植を受けるか他の疾患で亡くなるまで続けなければなりません。精神的な負担も非常に大きい生活です。

我々は、腎臓病について市民の方々によく知って早期発見と適切な治療を継続していただき、透析を回避していただくためにこの「さっぽろ腎臓病市民講座」を設立しました。

 

【さっぽろ腎臓病市民講座の会員】

下記の9施設で構成されています。

北海道大学病院 リウマチ腎臓内科

札幌医科大学病院 循環器・腎臓・代謝・内分泌内科
市立札幌病院 腎臓内科

JR札幌病院 腎臓内科
天使病院循環器内科・人工透析内科

勤医協中央病院 腎臓内科
北海道医療センター 腎臓内科
手稲渓仁会病院 腎臓内科

医療法人ネフロハス(手稲ネフロクリニック 札幌東ネフロクリニック)

 

 

【活動内容】
当面、1年に3回程度、札幌市内の各区で市民向けの講座を開催する予定です。

 

腎臓を大切にするために〜腎臓のしくみとはたらきを学ぼう! 市立札幌病院 腎臓内科 島本真実子

足元の悪い中、たくさんの皆様にお越しいただき、ありがとうございました!腎臓について、真剣に取り組んでおられる方々がこんなにおられると、感激いたしました。

 

以下に、お話しさせていただいた内容をまとめます。

 

1.       腎臓は何をしているか:イラストを用いて、腎臓、糸球体、尿細管などについてお話ししました。

・腎臓の形:大きさ:握りこぶし大、長径:大人は10cm程度、重さ:120150g 

・腎臓のはたらき:老廃物の排出、水分・電解質の調節、ホルモンの産生・代謝、血圧の調節・・つまり単なるフィルターではなく、たくさんの働きを担い、恒常性を保っています。生物の進化とともに腎臓も複雑になりました。

 

  1. 尿はなぜ黄色いか:○Xクイズで、多くの方が「わからない」と答えられました。

       黄色の正体は「ウロクローム」という色素

       ウロクロームは、便と同じビリルビンに由来

 

*要注意なのはどんな尿?

       赤い尿・褐色の尿⇨血尿の4大原因 ①膀胱癌などの悪性腫瘍 ②尿路結石 ③尿路感染 ④糸球体血尿

       泡立つ尿は蛋白尿か?⇨尿蛋白が多いと表面張力が増して泡立ちやすくなります。濃縮尿でも見られ、尿の泡立ちの自覚があっても、蛋白尿でないことも多いです。

       つまり、見た目では意外とわからない⇨定期検診等でチェックを受けてください

 

  1. 腎生検ってどんな検査?:腎生検の方法とその組織や糸球体の写真を見ていただきました。

腎臓の病気を正確に診断し、治療法を検討するために行います。診断時にどこまで進行しているのか、また、将来の進行のしやすさなども評価できます。腎臓に針を刺して、腎臓の一部を取ってきて顕微鏡で見て診断をします。出血などの合併症のリスクがあり、必要と判断された場合にのみ行いますので、適応とならない場合もあります。

 

  1. eGFRでわかること;eGFRとクレアチニンについて概説しました。

CKDの診断はeGFRで行います。糸球体濾過量(eGFR)とは、腎臓が1分間でどれだけの血液を綺麗にできるかを示したものです。eGFRはクレアチニンをもとに計算されます。年をとると、腎機能は自然に低下します。CKDガイドラインでは、40歳未満では、eGFR 60未満、40歳以上では、45未満で腎臓専門医に紹介いただくことが推奨されています。

 

  1. 腎臓の未来:異種移植の話題を取りあげました。○Xクイズでは、多くの方が正解でした。

異種移植(Xenotransplantation)とは種の異なる動物間での臓器移植のことです。

異種移植は、世界的に深刻な臓器提供者(ドナー)の不足を解決するために大きな期待が寄せられ、近年、急速に進んできた研究分野です。臓器提供を待つ患者数に比べて臓器の提供数が少ないという臓器不足の問題を解決するために有効な手段と考えられています。

実は、異なる動物間では、同じ動物同士よりも移植はさらに難しくなります。遺伝子改変の技術で、それが可能になりつつあります。異種移植のドナーとして、近年注目されている動物は、ブタです。米国を中心に研究が行われ、近年、ブタからサルへの異種移植で、1年を超える長期にわたり、腎臓がはたらき続けることに成功したと報告されており、今後の研究の成果が期待されます。

 

以上です。どうか皆様、お身体を大切に!腎臓も大切になってください。

 

次回の腎臓病講座も、よろしくお願いいたします。